雨だれ

「愛知県西部、きょうはくもりのち雨。

　降水確率は午前中２０％ですが、午後以降８０％」

一度降り出したら一日中やまない、という天気予報。

たしかに空は暗いけれども、しばらくはもちそう。

かばんに入れてあった折りたたみの傘を出して、

電器屋のダイレクト・メールの封筒と入れ替えた。

表に『ご来店頂くだけで粗品進呈』と大見出し。

裏に印刷してある＜粗品＞の写真はどう見ても傘だった。

あるセミナーでの会話。

「まるでマラソン大会だな。行け！行け！って」

「僕は雨だれを連想した」

「雨だれ？」

「ほら。窓ガラスについた水滴が下におりて行くところだよ。

　だいたいどれも同じ方向に行くでしょ」

「人それぞれだね」

「ガラスについた水滴の方は生存競争というよりも、

　仲間のところに帰ろうとしているように見えるかな」

話のきっかけは、科学ものの映画の中の「卵子を目指して泳ぐ精子の群」だった。

ちゃんとした屋根の下にいる限り、夜に降る中くらいの雨は面白い。

屋根をつたう雨は低音を出す。

木の葉や草に当たる雨は少し高く響き、

水たまりに落ちる雨は高く弾む。

天然のこもり歌。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　堤　剋喜　　　　　　　

「あいち福祉オンブズマン」（tel&fax052-963-0338）